
患者に全力を尽くすために、歯科医院ではさまざまな職種が従事しています。優秀な技術が集結することで、満足度の高いケアが可能です。しかし、多くの現場で人員不足が課題となっています。とくに歯科医の離職率が高く、定着が難しい状況です。ここでは、歯科医の離職率を抑えるポイントを解説しています。歯科医院経営者の方は必見です。
歯科における離職率の現状
まずは、歯科の人員状況・離職率を把握しましょう。歯科医の人口と課題
全国の歯科医師は、10万人を超える人口です。しかし、徐々に人口は減っており、半数以上が50~60代になります。そのため、長期間の勤務が期待できる、若手医師の確保が困難です。高齢化社会では歯科の需要が高いため、ますます歯科医師不足が進むでしょう。歯科全体の離職
歯科には歯科衛生士や歯科技工士など、多くの専門職が従事しています。これらの人員定着も、歯科医院経営には重要です。しかし、歯科衛生士の離職率は70%を超えます。2年以内に離職するケースが多い状況です。また、歯科技工士も深刻であり、5年以内に75〜80%が離職します。歯科医が不足する中、それぞれの専門職の定着も困難な状況です。歯科医院全体で、それぞれの職種が満足いく環境が求められます。
歯医者が離職してしまう理由とは
ここでは、よくある歯科医の離職理由を解説します。将来性を考慮しながら、改善できる点を探しましょう。独立開業
ある程度の経験値がある歯科医師の場合、独立開業のための離職が多くなります。全国で歯科医院は6万軒を超えており、コンビニより多い軒数です。近年、歯科矯正やインプラントなどの需要が高まっており、専門歯科医院の開業も増えています。30〜40代の歯科医師は独立開業することが多いため、ビジョンを共有しておくと安心です。
収入への不満
歯科医院は街中に多く存在するため、患者の取り合いが発生します。そして、売上が落ちた場合、人員・人件費削減が必要です。そこで、ひとりにかかる負担が多いわりに、収入が少ないといった不満が生まれます。また、多くの歯科医院が存在するからこそ、転職しやすい状況です。現状よりも好待遇な医院へ、転職希望することは自然な流れでしょう。収入は人員定着に重要な項目です。
人間関係
歯科医院では、さまざまな職種や年代が勤務しています。そのため、複雑な人間関係で悩む方は多いでしょう。歯科医師はベテランであっても、勤務医である限り意見しにくいポジションです。とくに院長の意見とぶつかる場合、ストレスを抱えることもあるでしょう。また、歯科衛生士や歯科技工士との関係性を上手く築けない場合もあります。自身のポリシーや技術を発揮できない環境はやりがいを感じません。需要が高く再就職しやすい分、相性のよい職場を探すことになるでしょう。
患者との関係性
歯科は治療にある程度の時間を要します。そのため、患者との円滑なコミュニケーションが必要です。接客業のような対応力が理想となるでしょう。しかし、クレームや理不尽な要求をされることもあります。それらのストレスが離職につながることもあるので、注意が必要です。離職率を少しでも下げるための対策
歯科医院経営において、離職率を下げる工夫は欠かせません。ここでは、具体的な対策を解説しています。課題抽出を行い、適切な対策を実践しましょう。待遇の改善
まずは、歯科医師の待遇を見直しましょう。給与を上げることは最善ですが、予算の問題もあります。そこで、勤務時間への配慮が必要です。早出・残業を極力なくすために、業務効率化や人員コントロールを行います。プライベート時間を確保し、ストレスに追われすぎない生活が目的です。家事や育児がしやすくなり、心の余裕が生まれるでしょう。また、趣味や勉強に時間を当てることで、充実した日々になります。勤務時間への配慮は、働きやすさに影響するため重要です。
従業員へのコミュニケーション
人間関係での離職を阻止するために、良好なコミュニケーションを取りましょう。歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士、それぞれの存在を尊重することが重要です。小さなことでも感謝し、褒めることを意識しましょう。やりがいを感じさせることや、モチベーション維持につながります。また、悩みや不満に対して敏感になり、問題が小さいうちに解決することが重要です。定期的に個人と話せる場を作ると、信頼関係を構築できます。ストレスが溜まりにくい職場を作りましょう。
教育の徹底
新人研修やスキルアップ研修など、技術や知識を学ぶ場は重要です。若い歯科医師も不安がなくなり、働きやすくなるでしょう。また、大切にされていることを実感できるため、前向きに成長します。相談の場をつくる
人間関係の悩みは、どこの歯科医院でも存在します。従業員が少ない場合、逃げ場がなく苦しむことになるでしょう。また、患者からの暴言やクレームを受けることもあります。そこで、定期的な面談やカウンセラーの利用がおすすめです。心のケアを行い、歯科医師に寄り添いましょう。人間関係の改善が難しくても、話を聴くことで気持ちは軽くなります。相談しやすい関係性を築き、早い段階で悩みをサポートしましょう。